高校生の万引き行動にどう向き合う?支援の現場で感じた“大人の関わり方”

盗みをした子との出来事から学んだこと

■ 買い物から帰ってきた高校生の「違和感」

高校生の男の子が買い物から戻ってきたときのこと。
手にしていたレシートと商品がなぜか合わない。

あれ?と思って見ていると、
彼のポケットからレシートに載っていない商品が出てきた。

その瞬間、私は
「──盗んじゃったんだな」
と直感的に感じた。

でも、不思議と責める気持ちより
“どうしてこうなったんだろう”という思いのほうが強かった。

■ 話を聞こうとしても、辻褄が合わない

「これどうしたの?」と聞くと、
彼は何かを答えてくれたけれど、
内容は曖昧で、辻褄が全く合っていなかった。

私はもう一度、
「取っちゃったの?」と聞いた。

その瞬間、彼は怒り出した。

でもその怒りは、
“責められたくない気持ち”
“見放されたくない不安”
そんなものが渦巻いているように感じた。

■ 尊敬する先生に相談してみた

私はすぐに、私が大好きで尊敬している先生に聞いた。

「先生なら、こういうときどうする?」

その先生の答えは、驚くほどシンプルだった。

「私なら『これどうしたの?』って聞いて、
きっと子どもは『払ってないけど勝手に入ってた』
って言うと思うのね。

そしたら『そっか、いつの間にか入ってたんだね』って受け止めて、
そこで終わりかな。」

え、それで終わり?と思った。

盗みは犯罪。
本人も悪いことだと理解しているはず。
普通なら、指導や反省を求める場面。

でも先生の言葉は、
まっすぐに“その子の心”を見ていた。

■ “信じてもらう経験”が行動を変える

私の中で、先生の言葉の意味をゆっくり噛みしめていくうちに
心の中でひとつの答えに行きついた。

この子は「悪い子」なんじゃない。
“悪い行動を選ばざるを得なかった子”なのかもしれない。

もし過去に
・怒られる
・責められる
・見放される
そんな経験ばかりしてきたのだとしたら──
今回も同じ反応をされたら、心はさらに閉じてしまう。

でも今回、彼は初めて
“自分をまっすぐ信じてくれる大人”
に出会った。

たとえ言い訳が苦しくても、
怒ることでごまかしても、
それでも「そっか」と受け止めてくれる人がいた。

この「信じてもらう経験」こそが
彼の行動を少し変えたのだと思う。

■ 私がもらった大切な学び

あの出来事は、私にとって大きな学びになった。

問題行動の裏には、
その子が抱えてきた背景が必ずある。

そして、行動を変える力は
“叱責”ではなく
“信じてくれる誰かの存在”だということ。

あの日の高校生との出来事は、
今でも心の中であたたかく残っている。

子どもの行動の裏にある「心の声」を見逃さない大人でいたい。
これからも、そんな関わりを積み重ねていきたい。

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